妊娠中の食事で気をつけること

妊娠する前から、バランスの良い食生活をして、適度な運動をしている方は、すでに「糖質」と「脂質」の両方をエネルギー源として活用しているため、妊娠中は過食によって太りすぎないことだけを気をつければいいとうことになります。

しかし、「糖質」に偏った食生活が長く続き、「脂質」の多い食べ物が苦手になっているとしたら、「脂質」の代謝が悪くなっている可能性があります。
このような状態で妊娠すると、様々なトラブルに巻き込まれることがあります。
最初に起こるトラブルは「つわり」です。
症状が軽ければ問題はないのですが、重症化すると、何も食べられないだけでなく数か月「嘔気・嘔吐」で苦しみ、入院治療が必要になることもあります。

なぜ、「つわり」があったりなかったり、あるいは軽かったり重かったりするのでしょうか?ここに一つの仮説があります。
「卵」から「ひよこ」が生まれてきますが、卵1個約60gの中の栄養素を見てみると、たんぱく質や脂質はそれぞれ約6gあるのに対して、糖質はわずか0.1gしかありません。
すなわち、ひよこが育っていくために必要なエネルギー源は「糖質」からできる「ブドウ糖」ではなく「脂質」からできる「ケトン体」ということがわかります。

ヒトの場合も胎児の血液中の「ケトン体」の濃度が非常に高いということがわかっており、胎盤は母体血中の「脂質」を「ケトン体」に変える働きを持っています。
つまり、ヒトの場合も成長に必要なエネルギー源は「ブドウ糖」よりも「ケトン体」の方が重要ではないかということです。
「脂質」の代謝が悪い方は、血糖値が下がってきてもケトン体の濃度が低値です。
そうなると、妊娠のごく初期に胎児が成長していくのに必要なエネルギー源が不足しますので、「つわり」が起こり、食べられなくなることで「糖質」の摂取が少なくなり、 徐々に「脂質」が燃焼しやすい体に変わっていくのではないかと考えられるのです。
したがって、「つわり」を回避するためには、症状が本格化する6週目までに「ケトン体」が増えやすい食事をすればいいのではないかという仮説が成り立ちます。
逆に言えば「糖質」ばかりを妊娠してからも摂取していると「ケトン体」ができにくくなるため、つわりが強くなる恐れがあるとも考えられます。

以上のことから、卵やチーズ、それに肉や魚は糖質をほとんど含まないため、これらを野菜と一緒に、しっかり食べることが出来るときに食べておけば、「つわり」が起こらないか、症状が出ても軽く済むと考えられるのです。
特に、皮下脂肪が少ない「瘦せ型」で「脂っこいものが苦手」な方が重症化しやすいので要注意です。
12~16週目になると胎盤が完成されますので、胎児のエネルギー源は胎盤で産生される「ケトン体」でまかなうことができますので、多くの場合「つわり」は自然と良くなっていくのです。

一方、つわりが良くなるころから今度は食欲が増してきます。
ここで「糖質過剰」かつ「カロリー過剰」の食生活を続けていくと一気に体重が増加していくので注意が必要です。
血糖値の変動が大きくなることで空腹感が出やすくなり、過食になってしまいますので、つわりの時期が過ぎても糖質は控えめに摂取する方が安全です。
また、そのような食生活が妊娠後半期に起こりやすい「妊娠性糖尿病」の予防にもつながっていくのです。

また、「糖質過剰」かつ「塩分過剰」の食生活は「妊娠性高血圧症候群」になりやすくなります。

最近「微弱陣痛」が原因で「遷延分娩」「胎児仮死」になり、帝王切開になる方が増えてきています。
これも「脂質」の代謝が悪いために、子宮筋に必要なエネルギー源である「ケトン体」が利用されにくくなり、子宮筋の「スタミナ不足」で微弱陣痛になってしまうからです。
陸上競技で短距離走に必要なエネルギー源は「ブドウ糖」ですが、長距離走では「ケトン体」です。
分娩を成し遂げるためには長距離走と同じ「ケトン体」が必要なのです。

「便秘」を予防するために大切なことは、毎朝「冷たい水」を一気に飲むこと。
次に、野菜、キノコ、海藻だけでなく、納豆、キムチ、ぬか漬けなどの植物性発酵食品を毎日摂取することが必要です。
さらに、オリーブ油やココナッツオイルを味噌汁に大匙1杯入れて食べるようにすることで、多くの場合、便秘薬に頼らずに排便できるようになります。
腸の動きを良くするのは腸内細菌が作ってくれる「短鎖脂肪酸」と自らの「ケトン体」です。

便秘をしていないのに、妊娠中にお腹がよく張ることがあれば、この時も「糖質過剰」が原因かもしれないと疑ってみてください。
血糖値の変動幅が大きくなることで、子宮筋が収縮しやすくなることがあります。

「糖質」に偏らず「脂質」を上手に摂取することが、妊娠中のトラブルを避けるために重要なことが、少しでもお分かりいただけたかと思います。
今一度、必要以上に「糖質」を摂取していないかどうか振り返ってみてください。

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