不妊と栄養障害

不妊治療には薬物療法などが必要になることもありますが、妊娠しやすい体作りも並行して行っていくことが大切です。

①米・パン・麺類・お菓子が大好き
②肉・魚・卵・チーズが大好き

②の方が妊娠しやすい方です。
①の方が妊娠しにくいのはなぜでしょう?

①は糖質が多い食品です。
子供の時から糖質の多い食生活をしていると、徐々に糖代謝が悪くなってきます。
そして、全身の細胞が活動するのに必要なエネルギーが不足してきます。

「糖質」は胃や腸で消化吸収され「血糖値(ブドウ糖の濃度)」を上昇させます。
血糖値を下げるためにすい臓から「インスリン」というホルモンがでます。
このホルモンの働きで「ブドウ糖」が細胞内に取り込まれ「細胞のエネルギー源」になるのです。
一部は「グリコーゲン」として短期的に蓄えます。

過剰に糖質が摂取されると、すい臓はさらに多くのインスリンを分泌しますが、このようなことが長く続くと、インスリンに対する反応が悪い体質になり(インスリン抵抗性)、血糖値がさらに高くなっていきます。
そうすると、すい臓はさらにインスリンを分泌してしまうのです。
この悪循環が繰り返されることで「ブドウ糖スパイク(食後高血糖)」「高インスリン血症」さらには「機能性低血糖症」まで引き起こすことになるのです。

このような状態を見過ごすと、すい臓が疲れてインスリンの追加分泌機能が低下し「糖尿病」になってしまうのです。
インスリンは「余ったブドウ糖」を「脂肪」に変える働きも持っていますので「肥満」にもなりやすくなります。

では不妊症の起こる原因について詳しく見ていきましょう(①~⑧)

①「ブドウ糖スパイク」・「高インスリン血症」は、それ自体がホルモンのバランスを狂わせ、排卵障害や卵子の質の低下の原因になります。
細胞の「糖化(たんぱく質と糖がくっつくこと)」「酸化(金属でいえばサビること・活性酸素が原因)」すなわち「老化」も起こりやすくなります。

②血糖変動幅がジェットコースターのような動きをすると、自律神経が乱れやすくなります。
血糖値が大きく下がってくると、逆に血糖値を上げようとして「グルカゴン」「アドレナリン」「コルチゾール」などのホルモンが分泌されます。
このため糖質過多の食事のたびに血糖の上下変動を繰り返すことが自律神経の乱れにつながるのです。
自律神経の乱れは、精神状態を不安定にさせるだけでなく、ホルモン調整のメカニズムに支障をきたします。

③糖質の多い食生活は、当然のことながら「たんぱく質や良質の脂質の摂取不足」だけでなく「ビタミン・ミネラル不足」を招きます。
野菜大好き人間も同じです。
たんぱく質と脂質とミネラルは体の細胞を作る原料です。
ホルモンや酵素の原料にもなります。
ビタミンは補酵素になります。
原料不足では新しい細胞は「リサイクル品」ばかりでできてしまいます。
これでは細胞が正常に機能しなくなり、代謝も悪くなって不妊症になっても仕方ありません。

④糖質やアルコールの代謝に多くのビタミンやミネラルを消費します。
つまり「糖質過多」「アルコールの摂取」はビタミン・ミネラル不足を招きます。
その結果、特にビタミンB1が不足すると、食べたものがスムーズにミトコンドリア内でエネルギーにならなくなり、全身の細胞がエネルギー不足になりやすくなります。
細胞が100%力を発揮できないわけですから、不妊症の原因になると考えられます。

⑤日本人女性の多く鉄不足(貧血がなくても)があり、これもエネルギー産生不足の原因になります。
「鉄」はミトコンドリア内で「エネルギー産生」する代謝経路に欠かせない「補酵素」だからです。
これにつては別の章で詳しく解説します。

⑥ビタミンB1不足や鉄不足などが原因でブドウ糖は「不完全燃焼」してしまいます。
そうすると「ブドウ糖」は「乳酸」に変わり、身体にたまりやすくなり、これも不妊症の原因になります。
「肩が凝る」「筋肉痛」「疲れやすい」「食べてもすぐお腹が空く」「甘いものが無性に食べたくなる」などの症状は「乳酸の蓄積」や「エネルギー不足」によって起こる症状です。

⑦「便秘」の原因も「たんぱく質不足」で腸管の筋層も薄くなり、押し出す力は弱くなってくることで理解できます。
また大腸のエネルギー源は「ブドウ糖」や「ケトン体」ではなく、「短鎖脂肪酸」という「脂肪酸」です。
「バター」や「酢」に含まれていますが、普通は「腸内の善玉菌」が「水溶性食物繊維」を発酵させて「短鎖脂肪酸」だけでなく「ビタミンなどの栄養素」を作ってくれているのです。
「糖質過多」は善玉菌を減らしてしまいます。
薬に頼らず「バナナウンチ」が出るようになることも妊娠しやすくなるために必要なことです。

⑧糖質過多の食生活で「糖質→ブドウ糖回路」ばかりでエネルギーを得ようとしていると、「脂肪酸→ケトン体回路」のスイッチが入りにくくなります。
効率よく安定したクリーンなエネルギー源は「脂質」です。
したがって「脂肪酸→ケトン体回路」を平常から活発に動かすことで、妊娠しやすい身体が出来ていくのです。
「脂質」については「トランス脂肪酸(マーガリン・ショートニング)」「加工食品の植物油(パーム油)」「加熱して酸化したサラダ油」 「ω6系の不飽和脂肪酸の摂取過多」「ω3系の不飽和脂肪酸の摂取不足」「飽和脂肪酸を代謝しにくい体質」などが不妊症につながります。

分子栄養学的考えると、機能性不妊症の原因のほとんどは「質的な栄養障害」です。
つまり「たんぱく質不足」「鉄・ビタミンBなどのミネラル不足」が大なり小なり関係しているのです。
また「高インスリン血症」により「脂肪酸→ケトン体回路」が十分機能していないことも関係しています。
「質的な栄養障害」が「高インスリン血症を増悪させる要因になります。
そして、これらの原因がこれまでの「炭水化物に偏った食生活」にあることを、まず理解しなければなりません。

そのほか「現代小麦粉のグルテン」「遺伝子組み換え食品」「食品添加物」「農薬・化学肥料」「シャンプー・洗剤などの界面活性剤」「電磁波」などの影響も注意しなければならないでしょう。

不妊症の患者さんに血液検査をしてみると、80%に鉄不足、50%にたんぱく質不足がみられます。
食後数時間以上たって、血糖値が80前後まで下がってもケトン体濃度が極めて低値の方も多く見られます。
これは「脂肪酸→ケトン体回路」があまり機能していない証拠です。
糖代謝の低下によるエネルギー不足が起こりやすい体質かどうかは問診だけでもわかることがあります。
まずは、「鉄不足を補い」、「たんぱく質を多く含む食品をしっかり食べていく」ことから不妊症の治療が始まるのです。
そして「糖質」よりも「脂質」がメインのエネルギー源にできる体質づくりを目指すのです。

妊娠するために、自分にとって何が薬になり、何が毒になる食べ物かを知り、食生活の改善が何よりも大切であることを知っていただきたいと思います。

☆妊娠しやすい体作りで大切なことのまとめ☆

「栄養」とは「たんぱく質」「脂質」「ビタミン・ミネラル」です。
「糖質」は「エネルギー源」になるだけで「栄養」ではありません。
「カロリー」が足りていても「栄養不足」は起こります。
「日本人女性」の大半が「質的栄養障害」になっています。
「良質な卵子」「良質な精子」には「栄養」が必要です。
「排卵障害」に「排卵促進剤」を投与しても「良質な卵子」にはなりません。
「子宮頚管粘液」も「栄養」が足らないと増えてきません。
「卵管が正常に機能」するためには「栄養」が必要です。
「受精」するためにも「ビタミン・ミネラル」は欠かせません。
「子宮内膜が薄い」「着床障害」は「栄養不足」が原因です。
「体外受精」を何回やってもうまく行かないのは「子宮内膜の栄養不足」が原因です。
「原因不明の不育症」「流産」の原因の多くは「栄養不足」で「エネルギー不足」があるからです。

「40歳以上」でも卵子さえ残っていれば「栄養不足」を解消し「代謝」が良くなれば、妊娠することは難しくないと考えられます。
体外受精を何度もして妊娠に至らず、妊娠をあきらめかけた42歳の女性でも「MEC食(肉・卵・チーズ)」で子供を授かっているのです。

「急がば回れ」このことわざの意味するところは、不妊症の治療にも大切なことなのです。

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